■目次
はじめに
真珠(パール)といえば「冠婚葬祭のアクセサリー」というイメージが強いと思います。
派手過ぎない暖かみのある輝きは結婚式等の喜ばしい式だけでなく、お葬式のような悲しい式の時にも身に付けられています。
しかし、これらにはちゃんとした意味があり、それは真珠の持つパワーストーンとしての効果や逸話、成り立ちから来ています。
真珠は昔から宝石としてだけでなく、その神秘的な輝きと効果から神話に結びつけられたり、パワーストーンとして大切にされてきました。
そもそも真珠(パール)って何?
まるで月の光のように暖かみのある柔らかな輝きを放つ真珠は、貝の体内で作られる鉱石であり、宝石でもあります。
しかしサファイアやルビーのような鉱石ではなく、貝という生き物から作られるため、「生体鉱物」または「バイオミネラル」と呼ばれています。
貝には「外套膜」という貝殻を作るための成分を分泌する膜があるのですが、小石や砂、小さな生物などが貝の体内に入ってきた時にこの外套膜も一緒に体内に入る事で真珠が作られます。
外套膜は貝の体内で細胞分裂を繰り返し、体内に入ってきた異物を真珠にするための「真珠袋」を形成します。
その真珠袋の中で、有機質とアラレ石と呼ばれるカルシウムの結晶を交互に重ね合わせて真珠層を作り、これで異物をくるくると包み込む事で私達がよく目にする真珠になるのです。
貝としては体内に入ってきた困った物を無害化するための行動なので、真珠がある程度の大きさになったり、無害化に成功したと判断すると真珠を体外に吐き出す事もあるようです。
真珠の特徴について
6月の誕生石の1つとされています。
有機質とカルシウムの結晶が真珠層を作るのですが、この非常に薄い層の構造によって干渉色が生まれ、この干渉色が真珠特有の輝きや虹のような色彩を生み出しています。
真珠に現れるの虹のような色彩の事を「オリエント効果」と呼びます。
真珠層の構造や含まれている色素の量等の要素や条件が複雑に絡み合う事で、
生まれる真珠の色彩や照り、形状が大きく変わり、それによって宝石としての価値が変わってきます。
小粒の真珠であっても真珠層の「巻き」が良いと高値が付く事もあります。
硬度はパワーストーンの中でもかなり柔らかく、オパールよりも傷付きやすい石です。
乱雑に扱ってしまったり、他の石にぶつかったり、爪が強く当たっただけで石に傷が付く事があります。
また、汗や熱、酸にも弱い面があるため、真珠の指輪等をしたまま料理をしたり酸味の強いドリンクを飲む時は注意が必要です。
特に柑橘系のドリンクは酸が強めなので、真珠に触れると真珠層が溶けて色彩や輝きが失われてしまいます。
真珠の名前の由来について
パールという名前の由来は諸説ありますが、ラテン語で果物の「洋梨」を意味する「perla(ピルラ)」あるいは「二枚貝」を意味する「perna(ペルナ)」であると言われています。真珠は二枚貝から生まれる事が多いので後者の由来の方がしっくり来ると思います。
前者の説は、真珠の様々な要因によって色彩や形状が変わる特徴を捉えており、実際に洋梨のような形状をしたパールも見つかっています。そのような真珠は「ドロップパール」あるいは「露玉」と呼ばれています。
和名の「真珠」にも由来があります。古来より自然界で取れる美しい石達は山で取れる物は「玉」、海から取れる物は「珠」と呼び分けていました。そこから真に美しい珠という事で「真珠」と呼ばれるようになったという説があります。
なお、産出地についてですが、
タヒチやパプアニューギニア、フィリピン等の広い範囲で産出されていますが、世界最高品質と呼ばれているのは日本産の真珠です。長崎県の大村湾、三重県伊勢島半島、愛媛県の宇和島が真珠の有名な産地となっています。
真珠の宝石言葉について
真珠には主に「健康」「長寿」「富」「素直」「純潔」「円満」等のメッセージがあります。
形や色の違い等で個別のメッセージを持っているので、何種類か紹介したいと思います。
- ライスパール…名前の通り米粒のような見た目とサイズの淡水パールです。
メッセージは「バランスのとれた愛情」。 - バイオレットパール…紫がかった色彩を持つ珍しいパールです。
メッセージは「自尊心と気高さ」。 - ドラゴンパール…真ん丸い形状ではないパールの事を「変形真珠(バロックパール)」と呼びますが、その中でもまるでドラゴンの手のような形状をした珍しいパールです。
メッセージは「生命の尊さ」。 - ホワイトパール…シルバーパールと並んでポピュラーな色彩の真珠です。シンプルですが、優しい輝きが印象的です。
メッセージは「謙譲と誠意」。 - ブラックパール…真珠を作る貝の中でも「黒蝶貝」という種類の貝が生み出すパールです。人気の海賊映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」にも船の名前に付けられています。
メッセージは「静かな力強さ」。 - クロスパール…バロックパールの一種ですが、こちらは何と十字架の形をしています。その珍しい形状から「神の力が宝石の形をとった物」という考えもあります。
メッセージは「不滅の愛」。
真珠を生み出す貝の種類について
真珠は貝のいわゆる「防御本能」の産物ですが、真珠を生み出す貝にも様々な種類があります。貝によってはそのままパワーストーンの1つとなっている物もあるので幾つか紹介していきたいと思います。
池蝶貝、川真珠貝
どちらも淡水パールを生み出す二枚貝の仲間です。生み出される真珠のサイズは数mm〜約2cm程とばらつきがあり、形状も様々です。海産の真珠貝のパールと比較すると安価ですが、変わった形状の物や色彩を持つ物は高値で取引されています。ライスパールより小さい淡水パールは「ケシパール」と呼ばれる事もあります。
ちなみにケシパールのメッセージは「一時の休息」、淡水パールのメッセージは「リフレッシュ」です。
アコヤ貝
皆様のよく知る白い真珠を生み出す真珠貝です。養殖の時は綺麗に削って形を整えた真珠の「核」をアコヤ貝の体内に入れる事で真珠を作ります。
また、アコヤ貝から取れた真珠を「アコヤパール」と呼ぶ事もあります。真珠と聞くとホタテ貝のイメージが強いと思われますが、アコヤ貝の貝殻はホタテに若干似てるので無理も無い気がします。
白蝶貝、黒蝶貝
白蝶貝は20cm程の大きさになる真珠貝の1種です。どちらも分泌物の色が違うため、生まれる真珠の色にもかなりの違いがあります。
白蝶貝からはホワイトパール以外にも淡い金色の輝きを放つ真珠が取れる事があり、「ゴールドリップ」と呼ばれて珍重されています。
黒蝶貝は白蝶貝と比較すると少々小柄ですが、黒い分泌物を出すためグレー〜黒色に染まった真珠が生まれます。
「ピーコックグリーン」という孔雀の尾羽の緑色のような色彩が表れる黒真珠は、数ある真珠の色彩の中でも最高級とされています。
アワビ
と思う方もいらっしゃると思いますが、真珠は二枚貝でなければできないという訳ではありません。
アワビも貝殻を作る時に分泌物を出しており、貝殻の内側を見れば分かりやすいのですが、ちゃんと真珠層が輝いています。アワビは異物が入り込むと二枚貝のように体内で真珠にするのではなく、貝殻の内側に塗り固めるようにします。
このようにできた真珠を「アバロンパール」と呼びます。食用の貝で真珠を作る貝にはカキもありますが、こちらは流通自体が少なく、コレクター向きです。コング貝は真珠層が少ないため、貝殻を削って加工し「マザー・オブ・パール(真珠の母貝)」として売られていたりします。
パワーストーンとしての真珠の効果について
長い間母貝に守られて成長し、生まれた真珠には強力な守護の力と生命力、心を癒す力があると言われています。
ストレスやネガティブな考え等のいわゆる「負のエネルギー」から身を守ったり、悪い縁を遠ざける力があります。そのためお葬式の時にパールを身に付けるのは、亡くなった方への追悼と共に、自身を取り巻く「死」や「悲哀」といったネガティブなエネルギーをはね除ける「厄除け」の意味もあります。
また、感性に働きかける石としても知られ、誠実さや気遣い等にも作用するので人間性が磨かれるパワーストーンでもあります。
特に女性の象徴や守護石として語られる事が多いですが、女性の品性や清楚な魅力、母性を引き出してくれる効果もあります。悲しみだけでなく喜ばしい事にも敏感な石なので、結婚式の時に真珠を身に付けるのは、新郎新婦の幸せや喜びが永く続くように、といった祝福の意を表すだけでなく、自分も新郎新婦のような良縁や幸せに巡り会うという「縁結び」の意味があります。
真珠にまつわる「おまじない」について
長寿や愛を意味し、悪縁を切る効果がある真珠は御守りや言葉では伝えづらい思いを託される事も多いパワーストーンとなっています。
・悪縁を切り、パートナーを守る誓いのプレゼント
厄祓いの力を秘めた真珠をアクセサリーにして旦那様から奥様へプレゼントするという事があります。
パートナーの事を想っての事ですが、男性から女性にパールをプレゼントする事は「貴女を幸せにし、守っていきます」という誓いの意味が込められています。
なかなか口に出すのは恥ずかしいかも知れませんが、そんな言えない想いと悪い事が降りかからないようにという願いが込められた素敵なプレゼントであり、おまじないです。
・安産、子宝の験担ぎに
「真珠は苦しみを以て生まれる」という言葉がある通り、貝は異物の痛みに耐えて真珠を作りだし放出(生み落とす)します。
この特徴から安産の御守りとして妊婦さんにプレゼントするおまじないがあります。
出産はとてつもない苦しみと痛み、そして死と隣り合わせという大変な事です。
その苦しみを少しでも和らげ、悪い気を晴らし、母子ともに無事に出産が終わるように祈りが込められています。
また、真珠は貝が何らかの理由で妊娠して生まれた物という説があるため、子宝祈願としてパールを送ったり購入する事があります。
似たような物ではタツノオトシゴを乾燥させた物も子宝や安産の御守りとして用いられた事があります。
・女子力ではなく「女性力」を磨きたい方に
真珠には感性を豊かにし、女性らしい気品溢れる美しさを授ける効果があると言われています。
可愛らしいガールではなく「レディ」。大人っぽくて上品で美しい、でも愛らしさもある。そんな世界に憧れていたり、これから大人の女性の仲間入りをしたいと思っている女性の方が自分磨きのために御守りとして身に付けていたりします。
・ストレスからの解放
仕事や学業等で失敗続きだったり、評価が良くなかったりすると誰だって落ち込んでしまいます。そしてストレスが溜まってしまい、負のスパイラルにはまってしまうのです。
真珠はそんな苦しみに寄り添い、負のスパイラルを断ち切り、苦しむ持ち主の心を癒してくれます。そのためストレスを感じた時は、真珠をしばらく見つめていると自然と心が穏やかになり、リフレッシュする事ができるとされています。
・潜水の御守りに
真珠は海と関係付けられる事が多く、海の底で生まれた真珠には海神の加護があると信じられ、潜水夫や漁師、航海士達の御守りになっていました。
・病気を治す!?
美しさを保つためにクレオパトラや稀代の美女達が飲んでいたとされる真珠ですが、かつては眼病や解熱、便秘を改善する薬として飲まれていたり、さらには止血や精神病の薬として用いられた事もあります。
真珠の浄化について
真珠は持ち主を負のエネルギーから守り、心の傷を癒してより豊かな感性や生命力を授けてくれるパワーストーンですが、浄化しないでいると石自体も負のエネルギーの影響によって疲れてしまい、効果が薄くなってしまいます。
そんな真珠のために、定期的な浄化はとても大切な事と言えます。
浄化の方法は数種類あり、真珠は水に強いため、流水で洗う事で浄化できます。また、月が出ている夜に月光浴をする事でも浄化ができます。
ホワイトセージを用いる時は、よく乾燥した葉を1枚取って火を着け、そこから立ち上る煙に軽くくぐらせます。
クラスターを使う方法もありますが、この時に貝殻やアバロンシェルにさざれ石を敷き、その上にパールを乗せると強い浄化作用があります。
真珠にまつわる神話について
真珠は神話によっては
- 恋人を想う人魚の涙が真珠になった
- 二枚貝が口を開けていたら天の露が体内に入って妊娠し真珠が生まれた
などがあります。ここでは真珠の誕生や関係の深い神話をご紹介したいと思います。
その美しさ、愛の深さは誰譲り? 〜ギリシャ神話〜
皆様はギリシャ神話の愛と美と性の女神「ヴィーナス(アフロディーテ)」についてご存知でしょうか?あの貝殻に乗っている姿が印象的で有名な絵画「ヴィーナスの誕生」のモデルとなっている女神様です。
本来はローマ神話で「ウェヌス」と呼ばれ、菜園を司る神でしたが、いつしかギリシャ神話に取り込まれていきました。美を司るという一面からか、美についてとてもプライドを持っている女神でもあります。
そんなヴィーナスと真珠の誕生話は男性にとって痛々しい物語だったりします。
かつて、ウラノスという神がガイアという女神との間にたくさんの子供達をもうけました。
この子供達をティターン十二神と呼びます。しかし父神のウラノスは醜い容姿の我が子を嫌い、タルタロスに幽閉してしまいます。今で言うDV夫です。
これに激怒した母神ガイアは末っ子にして時を司る神・クロノスに魔法の金属で作らせた武器「アダマスの鎌」を授け、父神に一泡吹かせるように命じます。
その結果、見事にクロノスはアダマスの鎌を用いてDV父神・ウラノスの大事なモノを鎌で切り落とし、文字通り「一泡」吹かせてあげました。そしてクロノスは憎き父神の大事なモノを海に投げ捨てたのです。
この時海にできた泡から生まれたのが愛と美の女神・ヴィーナスです。そして誕生した彼女の体から払われた水滴が真珠になったと伝えられています。派手すぎず、内側から輝くようなパールの美しさや守護の力は彼女の「美しさ」そのものであるとも言われています。
生まれたばかりなのに、ヴィーナスがあまりにも美し過ぎるので、最初に彼女を見つけた西風の精霊は一瞬で心を奪われ、彼女を陸地へ運ぶ手伝いをしてくれました。この様子が有名な絵画のシーンとなっています。
また、その美しさは最高神ゼウスの目にとまり、出生不明な彼女を養女として迎え入れ、オリュンポス十二神の一柱となったのです。
ちなみにクロノスが使った「アダマスの鎌」ですが、絵画では死神が持ってそうな大鎌で描かれ、
「アダマス」はダイヤモンドの語源になったとも伝えられています。後に最高神ゼウスが使う武器の1つとなります。
リアルドラゴンボール 〜仏教〜
どこぞの神龍の有名なセリフですが、この宝物の正体は真珠であるとされています。
この宝物は「如意宝珠」と呼ばれ、仏像が持っている姿が印象的です。見た目は先の尖った栗、あるいは炎を纏っている事もありますが、私からしたらドラゴンクエストのスライムが丸っこくなった形に見えます。
↓↓
この宝物は海の底にある竜宮城で管理、保管されていると言われています。よく龍が手に珠を持っている姿が描かれますが、それがまさに如意宝珠なのです。元々は財を司っている蛇の神の持ち物だったという話もあります。
如意宝珠にはどんな願い事でも叶えてくれる強大な力があり、どんな重い病でも一瞬で治ったり、荒れ果てた土地や汚れた水を豊かで美しい土地や水に変え、欲しいと思った物をすぐに手に入れる事ができるとされています。
これほどの力を持っているので、きちんと使い方やタイミングが分かっている徳の高い仏様や龍神しか持つ事ができない宝珠なのです。
神様だって欲しい物がある 〜日本神話〜
日本の神話にも真珠にまつわるお話があります。
遠い昔、允恭(いんぎょう)天皇という天皇が淡路島に狩りをしに行きました。淡路島は自然豊かな美しい島で、兎や鹿等の多くの獲物に恵まれていました。しかし、いざ狩りを始めると雀の1羽も獲れないのです。
困った允恭天皇の御一行は占いをする事にしました。すると島の神が現れ、このように述べました。
「明石の海の底に大きくて立派な真珠がある。その真珠を私に奉納するなら、獲物が全て手に入るだろう。」
この言葉を聞いた允恭天皇は、島中から海人(今で言う潜水漁師)を集め海に潜らせて真珠を取る事にしました。しかし、明石の海はとても深く、いかに潜水が得意な海人といえど、底に辿り着く事ができたのはたった1人だけでした。その海人は、海底にいた光り輝く大きなアワビを抱いて戻り、允恭天皇にそのアワビを託して亡くなってしまいました。
託された巨大アワビの中からはお告げの通り大きくて立派な真珠が出てきました。そのサイズは何と、桃と同じくらいの大きさであると伝えられています。
允恭天皇はこの巨大真珠を島の神に奉納してから狩りに出たところ、今まで獲れなかった事がウソのように、島中の大量の獲物に恵まれたとの事です。
真珠にまつわる逸話や曰く付きの話について
真珠はその神秘的な輝きや貝から生まれる希少性から昔話や贈り物として多くの逸話を残しています。そのお話の幾つかを紹介していきたいと思います。
・今は昔のお話です。お伽噺草子「竹取物語」
竹取物語は「かぐや姫」と呼ばれ、有名な昔話として知られています。しかし、昔話として語られる時は捧げ物の話を省略している事が多いため、真珠が関わっている事はあまり知られていません。
お伽噺草子の中では、昔話と同じように、かぐや姫の美しさに魅入られた男性達が毎日竹取の翁の家に集まり、あらゆる方法でかぐや姫に求婚を申し入れました。しかし、かぐや姫はそれに応じません。見かねた翁は「自分達はもう老齢でいつ死ぬか分からない身。この世の男女が結ばれるのは当たり前の事なので、貴女も結婚したら良いのでは?」とかぐや姫に言いました。するとかぐや姫は結婚は良いとして、その後浮気をされたら後悔する事になるとし、「どんなに位の高い方であっても、その心根の分からない相手と結婚できません。なので、ちょっとだけ試させていただきます。」と答えました。
その試練とは「かぐや姫が頼んだ物を持ってくる」事で、翁によって5人の貴公子達に告げられました。仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、竜の首の玉、火鼠の皮衣、燕の子安貝がかぐや姫が頼んだアイテムです。
この5人の貴公子の内、車持皇子は「蓬莱の玉の枝」を持って来るように頼まれました。蓬莱の玉の枝は、根が銀、茎が金、実は真珠であると伝えられています。車持皇子はたくさんの職人を集め、蓬莱の玉の枝を作らせました。そして、かぐや姫の前に職人に作らせた玉の枝を見せ、ウソの冒険譚を語り始めたのです。
この冒険譚を簡単に言うと「蓬莱の島に辿り着き、その島には美しい物が溢れていたのですが姫に頼まれていた物と違う物を持って来るのは約束と違うので、枝をもいで持って来ました。」という内容です。
かぐや姫は最初は喜んでいましたが、いざ求婚というタイミングで給料未払いに激怒した職人達が家に雪崩れ込んできた事でウソや偽物である事がバレてしまい、求婚は破談となりました。この後、車持皇子がしばらく行方をくらませた事から「たまさがなる」というようになったと言われています。
他の貴公子達も相次いで失敗しており、そのエピソードから言葉が生まれていたりします。
・貴女は何を思う?「真珠の耳飾りをした少女」
光の明暗や加減の美しさが特徴のオランダの画家・フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」は真珠の輝きと少女の瞳が印象的な絵画です。
普通に鑑賞する分には、フェルメールの技術の高さや描かれた少女の姿に息を飲む作品ですが、この絵画にはちょっとした曰くがあるのです。
この少女、実は処刑される直前のタイミングで描かれたというのです。
一説によるとこの少女は、とあるお屋敷で働いていたメイドのような人だったらしく、その旦那様と不倫関係にあったと言われています。しかし、それを奥様に見つかって咎められた上に旦那様にも保身のために見捨てられ、処刑される事になったと伝えられています。布を使って髪を高く盛った髪型は、ギロチンの邪魔にならないようにするためです。
「不倫くらいでそんな…」と思う方もいると思いますが、当時の女性は貴婦人であろうが使用人であろうが不貞行為をしたら処刑されるのが当たり前の世の中だったのです。今では法律によって社会的に罰されますが、昔は命がかかっていました。
それを知った上で再びこの絵画を見ると違った表情が見えてきます。
真珠は弔いの石。彼女の瞳から静かに伝わる悲しみと真珠の輝きが皮肉にも美しさを際立たせる作品なのです。
・??「ちょっと隋行ってきて〜」日本からの贈り物
古来から日本では、真珠は大切な輸出アイテムの1つでした。中国の歴史書「魏志倭人伝」には、当時邪馬台国の女王であった卑弥呼が、中国にあった魏という国に真珠を5000個も送ったという記述があります。
真珠はとても貴重なため、当時の中国では装飾品として使う他に、病気を治す薬としても珍重されていたそうです。
また、中国の王朝が隋に変わった頃、飛鳥時代である日本から聖徳太子の命を受けた小野妹子が隋に行って真珠を献上しています。時代が変わっても真珠は大人気かつ重要な外交アイテムだったのです。
・エジプト女王の究極の贅沢を見よ!
エジプトの女王であり世界三大美女とも讃えられるクレオパトラは真珠好きとしても知られ、彼女は耳に大粒のバロックパールの耳飾りを着けていたそうです。
ある日、アントニウスというローマ将軍が率いる軍勢がエジプトに遠征にやって来ました。そして毎日のように豪華な食事や酒を飲んで宴会をしていました。良い気になっているアントニウスに対して、クレオパトラは少々呆れながらこう言い放ちました。
「こんなものは本当の贅沢ではない。私が本当の贅沢というものを見せてやろう。」
その次の夜、クレオパトラは盛大な宴会を開きましたが、美食の国からやって来たアントニウス達にとってはあまり贅沢な感じはしなかったようです。
「クレオパトラもこの程度か。」とアントニウスがガッカリしかけたその時、クレオパトラは侍女に酢が入った杯を持って来させました。すると、自身が身に付けていた真珠の耳飾りの片方を入れて溶かし、呆気にとられるローマの軍勢の前で一気に飲み干したのです。
クレオパトラの真珠は当時世界最大の真珠であり、その1粒の価値は国が傾くどころか王国すらも易々と買収できると言われていた代物です。そんな「国崩し」を平気で飲み干し、もう1つ飲もうとしたクレオパトラをアントニウスは「私の負けだ!」と叫び必死で止めたと言われています。
美しいだけでなく度量や知識も優れていたと言われる女王ならではのパフォーマンスであり、彼女の真珠がどれだけの価値があり、貴重とされていたかが分かるエピソードです。
このように世界中で多くの逸話を残してきた真珠ですが、中には悲しい歴史を生み出す原因になってしまった事もあります。
・血と犠牲の上に輝く 〜南米で起きた悲劇〜
当時の真珠は天然物で、美しく希少性が高いため非常に人気の宝石でした。かつてマルコ・ポーロという商人が日本にやって来た時、日本の真珠の美しさを「東方見聞録」という書物に記載しています。
この書物をきっかけに、多くの商人達が真珠に憧れを抱き、我先にと入手先を確保するために船出しました。有名な探検家・コロンブスも真珠を求めた人達の1人です。長い航海の末に、彼は南米のベネズエラに辿り着きました。ベネズエラの沿岸には大量の真珠があったため、ベネズエラは真珠の産地として広く知られるようになりました。
しかし、真珠を求めて多くの人々がベネズエラに押し掛けるようになり、買い取るどころか現地の人々を苦しめ、略奪をするようになってしまいました。真珠はダイヤモンドのような悲劇的な話は無いと言われていますが、歴史を辿れば血塗られた悲劇の上に輝く宝石でもあるのです。
職人が魅せる超絶秘技!螺鈿(らでん)工芸!
螺鈿とは夜光貝やアワビ、黒蝶貝等の真珠層を作る貝を使った装飾技法の事で、漆器や帯、印籠等の伝統工芸品に用いられます。『螺』は貝を、『鈿』は散りばめる事を意味しています。
貝殻の内側にある真珠層を切り出して板状にし、それを彫刻を施した木地や漆地にはめ込んだり、小さな真珠層の板にさらに細かい彫刻を施して作られるという、僅かなミスすら許されない、まさに神業の工芸品です。
使う貝によって色に違いがあったり、緻密に計算しつくされたデザインや美しさは工芸品の域を通り越して芸術品です。
使うのを躊躇ってしまいそうな美しさですが、全て職人が手作業の一級品。同じ輝きを放つ物はありませんので特別な逸品が欲しい方は是非購入してみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は月にも似た柔らかい輝きを放ち、人々の心に寄り添い守る慈愛溢れるパワーストーン・真珠についてご紹介いたしました。
その美しさや秘めたパワーから古来より珍重されていたという事もあり、多くの神話に関連付けられて語り継がれたり、様々な逸話を残しています。如意宝珠の話も真珠ですが、竹取物語に出てくる「竜の首の玉」も海に住まう竜の首にある五色に輝く宝珠とされているため、虹色の光沢を持つ宝石である真珠の可能性もありそうです。
真珠は加工されるとより力を増すパワーストーンとしても知られているので、ジュエリーアクセサリーとして加工された物を御守りとして持つのもオススメです。
人の心にある悲しみや苦しみに優しく寄り添って悪い縁から守り、喜ばしい時には一緒に喜んで幸せを呼ぶ強い力を発揮する真珠はまさに老若男女問わず1つは持っておきたいパワーストーンです。
デリケートではありますが、ちょっと手のかかる方が愛着や可愛げがある物です。癒されたい、感性を磨きたいという方は是非、身に付けてはいかがでしょうか?