「親の介護なんて、まだ先の話だろう」——そう思っていたのに、ある日突然「お父さんが転んで骨折した」「お母さんが認知症の診断を受けた」という電話がかかってくる。そんな経験、身近に聞いたことはありませんか?
正直に書くと、私はまさにそのパターンで痛い目を見ました。「うちの親はまだ元気だし」と高をくくっていたら、母が65歳で脳梗塞を発症。急に介護が始まって、何が何だか分からないまま病院・役所・施設と走り回り、3ヶ月間ほとんど眠れない日々が続きました。



この記事では、突然の介護で私が経験した失敗談と、その反省から学んだ「親が元気なうちに準備しておくべき7つのこと」を実体験をもとに徹底解説します。
結論を先に言うと、介護準備は「何かあってから動く」では間に合いません。親が元気なうちに始めた人ほど、いざ介護が始まっても精神的・経済的なダメージが圧倒的に少なくなります。
- 突然の介護で後悔しないための7つの事前準備
- 介護保険の申請タイミングと手順
- ケアマネジャーの探し方・選び方のコツ
- 施設選びで失敗しないためのポイント
- 在宅介護で安全な環境を整える方法
■目次
準備なしで介護が始まったときの実体験


準備前:突然介護が始まった頃の私の失敗リアル
母が脳梗塞で入院した日から、私の「介護パニック」が始まりました。以下は、準備ゼロで介護に突入したときの実際の失敗記録です。

- 介護保険の申請方法を知らず、退院後2ヶ月間サービスを使えなかった
- 母の通帳・保険証書・お薬手帳がどこにあるか分からず、病院・役所をたらい回しに
- 「施設に入れることになったら」の話を親としたことがなく、本人の意思が全く不明
- 兄弟間で「誰が主に介護するか」「費用はどう分担するか」を決めておらず、険悪になった
- 介護リフォームの補助金制度を知らず、全額自費でトイレの手すりを付けた(補助があれば9割負担してもらえたのに)
- ケアマネジャーが誰か分からないまま退院し、最初の1週間は完全にワンオペ介護
- 夜中に転倒の音がして飛び起きる毎日で、自分も体を壊した
- 介護保険の申請が遅れ、2ヶ月間サービスを全額自費負担した
- 親の意思(施設への抵抗感・延命の希望など)を聞けておらず、判断できなかった
- 兄弟で役割分担を決めず、関係が悪化した



準備後:7つの手を打ってから変わったこと
母の介護を経験した後、父の介護準備として7つの準備を3年かけて進めました。その結果、父が転倒骨折で入院したときも、驚くほどスムーズに動けました。
| 比較項目 | 母の介護(準備ゼロ) | 父の介護(準備あり) |
|---|---|---|
| 介護保険申請 | 入院から2ヶ月後(知らなかった) | 入院翌日に申請(手順を把握済み) |
| 施設候補の選定 | 1ヶ月間でゼロから調査(混乱) | 3施設をリスト化済みで即連絡 |
| 家族の役割分担 | なし(もめた) | 担当を決めていたのでスムーズ |
| 親の意思確認 | 未確認(判断に迷い続けた) | エンディングノートで意思を把握 |
| 介護リフォーム | 全額自費で20万円 | 補助金活用で自己負担2万円 |
| 精神的ダメージ | 自分も体調を崩した | しんどいが倒れずにいられた |

親の介護準備を始める方法7選


【準備1】親と「介護・老後」の話をしておく(最重要)

親が元気なうちに「もし体が動かなくなったらどうしたいか」「どこで暮らしたいか」「延命治療はどうするか」を確認しておくことは、いざというときに家族が迷わず動くために欠かせません。
「介護の話」を切り出す3つのタイミング
唐突に「もし倒れたら」と切り出すのはハードルが高いです。以下のような自然なタイミングを使うと、話が入りやすくなります。
- 親戚や知人が介護になったとき:「〇〇さんのところも介護が始まったみたいだね、うちはどうしようかな」
- テレビや新聞で介護特集を見たとき:「こういう施設って実際どうなんだろうね」
- 健康診断の結果が出たとき:「結果はどうだった?何か気になるところはあった?」
- お正月・お盆の帰省のとき:家族が集まるタイミングに話し合いの場を設ける
- 体が不自由になったら「自宅」で過ごしたいか「施設」に入りたいか
- 延命治療(胃ろう・人工呼吸器など)はどう考えているか
- 通帳・保険証書・不動産証書などの重要書類はどこにあるか
- かかりつけ医・飲んでいる薬の情報
- 万が一の時に連絡してほしい人(親戚・友人)のリスト



【準備2】介護保険の仕組みと申請方法を理解する

介護保険は65歳以上(特定疾患があれば40歳以上)の人が利用できる公的保険です。要介護・要支援の認定を受けると、訪問介護・デイサービス・施設入所などが1〜3割の自己負担で利用できます。

介護保険申請の手順
| ステップ | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| ①申請 | 市区町村の窓口または地域包括支援センターで申請書を提出 | 当日〜数日 |
| ②認定調査 | 市区町村の調査員が自宅に来て、心身の状態を調査 | 申請から1〜2週間 |
| ③主治医意見書 | かかりつけ医が意見書を提出(市区町村が依頼) | 並行して進む |
| ④審査・判定 | 介護認定審査会で要介護度を審査 | 2〜3週間 |
| ⑤認定通知 | 要支援1〜2・要介護1〜5のいずれかで通知 | 申請から最大30日 |
| ⑥ケアプラン作成 | ケアマネジャーがサービス計画を作成し、サービス開始 | 認定後すぐ |


- 要支援1〜2:日常生活はほぼ自立。一部サポートが必要
- 要介護1〜2:歩行・立ち座りなどに不安。一人暮らしが難しくなってくる
- 要介護3〜4:ほぼ全面的なサポートが必要。施設入所を検討する段階
- 要介護5:寝たきりに近い状態。24時間介護が必要

【準備3】地域包括支援センターと相談窓口を把握する

地域包括支援センターは、市区町村が設置する「介護の総合相談窓口」です。介護保険の申請から、ケアマネジャーの紹介、施設情報の提供、介護者の相談まで、介護に関するほぼすべての入り口になります。


地域包括支援センターでできること
- 介護保険の申請サポート(一緒に窓口に行ってくれることも)
- ケアマネジャーの紹介・マッチング
- 地元の介護施設・デイサービスの情報提供
- 介護者(家族)のメンタル相談・支援
- 成年後見制度・高齢者虐待の相談
- 認知症に関する相談・診断への橋渡し
Googleで「(市区町村名)地域包括支援センター」と検索するか、市区町村の公式サイトで確認。電話番号・場所・担当エリアをメモしておくだけでOK。いざというときに「どこに電話すればいいか」がすぐ分かるようにしておく。

【準備4】ケアマネジャーの選び方を知っておく

ケアマネジャーの質で、介護生活の質が大きく変わります。良いケアマネに担当してもらえると「この選択肢があったの!?」と知らなかった制度やサービスを教えてもらえますが、合わないケアマネだと「放置されている」と感じることも。



良いケアマネを見極める5つのポイント
| チェック項目 | 良いケアマネの特徴 | 要注意のケアマネの特徴 |
|---|---|---|
| 連絡のとりやすさ | 電話・メールに当日中に返答がある | 連絡がつかない・折り返しが2〜3日後 |
| 提案の幅 | 複数の選択肢を提示してくれる | 特定のサービスしか提案しない(自社誘導の可能性) |
| 家族への説明 | 専門用語を使わず分かりやすく説明してくれる | 専門用語ばかりで質問しにくい雰囲気 |
| 本人への接し方 | 本人(親)の意見を尊重して聞いてくれる | 家族にばかり話しかけ、本人を軽視 |
| 情報提供 | 自分から「こんな制度もあります」と提示してくれる | 聞かないと何も教えてくれない受け身スタイル |



【準備5】施設の種類と選び方を事前に調べておく

介護施設は大きく「特別養護老人ホーム(特養)」「介護付き有料老人ホーム」「グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などに分かれます。費用・サービス内容・入居条件が大きく異なります。

主な介護施設の比較
| 施設の種類 | 特徴 | 月額目安 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 特養(特別養護老人ホーム) | 公的施設。原則要介護3以上。待機者が多い | 5〜15万円 | 費用を抑えたい・重度介護が必要 |
| 介護付き有料老人ホーム | 24時間介護スタッフが常駐。入居一時金が高め | 15〜30万円 | 手厚いケアを望む・費用に余裕がある |
| グループホーム | 認知症高齢者向け。少人数で家庭的 | 15〜20万円 | 認知症がある・地域密着の生活を続けたい |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 安否確認・生活相談が付いた高齢者向け賃貸 | 10〜25万円 | 自立〜軽度介護・プライバシーを大切にしたい |
| 老健(介護老人保健施設) | 病院退院後のリハビリを目的とした施設。入居期間に目安あり | 8〜15万円 | 退院後、自宅復帰を目指すリハビリ期 |


- スタッフの雰囲気(笑顔で話しかけているか・疲れ果てていないか)
- 入居者の様子(生き生きしているか・うつむいていないか)
- 施設の清潔感(廊下・トイレ・食堂の臭いはどうか)
- 食事の内容(実際に昼食を試食できる施設もある)
- 看取り対応の有無(最期まで施設で過ごせるか)

【準備6】在宅の安全環境を整える

厚生労働省のデータによると、高齢者の事故の約7割が「自宅内での転倒」です。特に危ないのはトイレ・浴室・階段・玄関の段差で、これらへの対策が介護予防の基本になります。
在宅環境整備のチェックリスト
- 手すりの設置:トイレ・浴室・玄関・階段に設置。介護保険の「住宅改修費」で上限20万円まで補助あり
- 段差の解消:スロープや段差解消材で引っかかりをなくす
- 滑り止めマット:浴室・脱衣所・玄関に設置
- 照明の改善:夜中のトイレに向けた足元ライトを設置(センサー付きが便利)
- コードの整理:延長コードが床を這っていると引っかかりの原因に
- 玄関の工夫:靴の脱ぎ履きが安全にできるよう椅子や手すりを置く


介護保険の住宅改修費補助は「工事前に申請・承認を得る」のが原則です。先に工事してしまうと補助が認められないケースがあります。必ずケアマネか市区町村窓口に相談してから業者に発注してください。

【準備7】見守り・緊急対応の仕組みを作る

親と離れて暮らしている場合、日々の様子が見えないことが一番の不安になります。「いつもはすぐ電話に出るのに今日は出ない」「昨日から連絡がない」というときに、どう対応するかをあらかじめ決めておくことが安心につながります。
見守りの仕組み5つの選択肢
| 見守り手段 | 概要 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 見守りカメラ | 自宅にカメラを設置。スマホでリアルタイム確認できる | 機器代5,000〜3万円・通信費月1,000円〜 |
| 緊急通報システム | ボタンを押すと緊急センターに繋がる機器。自治体の補助がある場合も | 月2,000〜5,000円程度 |
| センサー型見守り | トイレ・玄関のドアにセンサーを設置。動きがなければ通知 | 月1,000〜3,000円程度 |
| 定期電話・メール | 毎日決まった時間に連絡を取り合う習慣をつくる | 無料(通話料のみ) |
| 配食サービスの活用 | 毎日の食事配達で、スタッフが様子を確認してくれる | 1食500〜800円程度 |



【bonus】情報を整理・記録する

介護が始まると管理しなければならない情報が急増します。病院・薬・保険・ケアマネ・施設・補助金・家族の連絡先……。これらを一か所にまとめておくことが、介護の「ショートカット」です。
介護記録ノートに書いておくべき情報
- 基本情報:保険証番号・介護保険番号・かかりつけ医の連絡先
- 薬の記録:飲んでいる薬の名前・量・時間・副作用の注意
- サービス記録:利用しているデイサービス・ヘルパーの会社名・担当者・連絡先
- 緊急連絡先:主治医・ケアマネ・地域包括支援センター・救急病院・近所の親戚
- 日々の記録:体温・血圧・食事量・排泄の様子(診察時に役立つ)
- 費用の記録:介護保険の利用明細・医療費・介護用品の購入記録(確定申告で使える)



よくある介護準備の失敗パターンと対策


介護準備のよくある失敗7パターン
| 失敗パターン | なぜ起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 「まだ元気だから」と先延ばし | 緊急度を感じにくい | 「いつかではなく今日」から1つずつ始める |
| 兄弟間での役割分担を決めない | 「話し合いが気まずい」で後回し | お正月・お盆のタイミングで一度話し合う機会を作る |
| 親の意思を確認しないまま進める | 「言いにくい」「まだいい」という回避 | エンディングノートをプレゼントする形で切り出す |
| 介護保険の申請が遅れる | 制度を知らない | 「軽度のうちに認定を受けておく」を合言葉にする |
| 住宅改修を先にやってしまう | 申請手続きを知らなかった | 必ずケアマネか市区町村に確認してから工事発注 |
| 一人で抱え込む | 「迷惑をかけたくない」という遠慮 | ケアマネ・地域包括に積極的に相談。「一人でやらない」が鉄則 |
| 介護者自身が倒れる | 自分のケアを後回しにする | ショートステイ・デイサービスで「介護の空白時間」を作る |


よくある質問(FAQ)


Q1. 親が「介護の話はしたくない」と拒否します
「死ぬ話をするな」「まだそんな年じゃない」と言われることはよくあります。そういった場合は無理に進めず、「私が不安なので教えてほしい」という子ども側の感情を伝えるアプローチが有効です。また、エンディングノートを「書いてほしい」ではなく「一緒に書いてみようか」とお願いするのもいい方法です。

Q2. 介護保険はいつ申請すればいいですか?
65歳になったら「まだ元気でも」申請することをすすめます。認定を受けておくだけなら費用はかかりませんし、軽度のうちに認定を取っておくと、いざ重度になったときの認定変更もスムーズです。「申請=すぐにサービスを使わなければならない」ではないので、早め早めが吉です。
Q3. 遠距離介護でも準備できますか?
できます。むしろ遠距離介護の場合こそ、事前準備が重要です。帰省のたびに少しずつ「かかりつけ医の確認」「地域包括支援センターへの相談」「見守り環境の整備」を進めてください。親の地元のケアマネを早めに見つけておくと、遠距離でも「現地の頼れる人」がいる安心感があります。

Q4. 介護費用はどのくらいかかりますか?
在宅介護の場合、月3〜10万円程度が目安です(要介護度・利用するサービスによる)。施設入所の場合は月10〜30万円程度かかります。介護保険を使えば自己負担は1〜3割ですが、それでも積み重なると大きな金額になります。親の預金・年金・保険の確認と、もし資金が足りない場合の家族間の費用分担を事前に話し合っておくことが重要です。
Q5. 認知症が疑われるときはどうすればいいですか?
まずはかかりつけ医か地域包括支援センターに相談してください。「認知症の疑いがある」と言えば、専門医(神経内科・精神科)への受診を案内してもらえます。早期診断・早期治療が大切なので、「まだ様子を見よう」で先延ばしにしないことが重要です。早期なら進行を遅らせる薬や、適切な環境整備で生活の質を長く保てることがあります。

Q6. 兄弟がいるのに介護を押し付けられそうです
介護の負担を一人に集中させないためには、「役割の明確化」が不可欠です。身体的なケア・経済的なサポート・情報収集・精神的サポートなど、担当を決めておくと不公平感が減ります。「できる人がやる」では必ずひずみが生まれます。ケアマネや地域包括支援センターの相談員に、家族会議の場に同席してもらうのも有効です。

Q7. 仕事をしながら介護はできますか?
できます。ただし「仕事をやめて介護に専念」は、経済的・精神的に追い詰められるリスクが高く、安易にすすめることはできません。まず「介護休業制度」(最大93日取得可)、「介護休暇」(年5日)を確認してください。また、デイサービス・ヘルパー・ショートステイをうまく組み合わせることで、仕事と介護の両立は十分可能です。

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まとめ:介護準備は「早すぎる」ということはない

今回紹介した7つの準備をおさらいします。
- 準備1:親と「介護・老後」の話をしておく(意思確認・重要書類の場所確認)
- 準備2:介護保険の仕組みと申請方法を理解する(早めの申請が命)
- 準備3:地域包括支援センターと相談窓口を把握する(頼れる窓口を知っておく)
- 準備4:ケアマネジャーの選び方を知っておく(合わなければ変更OK)
- 準備5:施設の種類と選び方を事前に調べておく(特養は早めに名前を入れる)
- 準備6:在宅の安全環境を整える(住宅改修は補助金を申請してから工事)
- 準備7:見守り・緊急対応の仕組みを作る(遠距離でも仕組みで対応)



介護は突然やってきます。「その日」に備えておくことが、自分と親の両方を守ることにつながります。今日から1つだけ、できることから始めてみてください。
- 親の住む地域の「地域包括支援センター」の電話番号を検索してメモする
- 次に親に会うタイミングで「エンディングノート書いてみようかな」と一言言ってみる
- 親のかかりつけ医の名前・連絡先・飲んでいる薬の名前を確認する













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